行方

ものを作る、加工する。それが可能なのは人間に限ったことではない。鳥だって巣を作るし、サルなども道具を使ってエサを獲得したりするし、或るフグは海底にミステリーサークルを描くという。人間と違うところがあるとすれば、動物たちの作ったものは自然に還るというところと、そこに責任が発生しないというところだろうか。

 

自然を利用することも、人間だけが行っていることではない。しかし、これもまた人間とその他生物では認識が異なるだろう。自然界の生物たちに、責任は発生しない。対して人間は、責任を知りながら自然を利用する。

 

責任とは、人間が勝手に生み出した概念の一つに過ぎない。ところがこの世界では、その概念を生み出し、使用しているはずの私たち人間こそが、一番「責任」を蔑ろにしていると感じるのは私の気のせいなのだろうか?

 

 

 

山間を切り開き、巨大なホテルが建設された。後先を考えずに建設した結果、このホテルは数十億円という負債額を抱え、廃業。オーナーは失踪した。

 

自然の中に一点、責任を追及されるべき人間が不在のまま打ち捨てられている。

自然にも還れず、ただただ朽ちてゆくほか、この建物に選択肢はない。

 

かつて人々に利用されていた日々は遠く、まるで夢のように、面影すらも時間と共に朽ちてゆく。

 

 

「つくる責任つかう責任」

 

人間の作ったものはすべて、人間に責任がある。