今回、作品を撮影するにあたり「顔」というテーマで人の顔を撮影するのは面白みに欠けるのではないかと考えた。そのため、シミュラクラ現象というものに焦点を当ててみることにし、日常生活で顔に見えるものの撮影を試みた。そもそも、シミュラクラ現象は人間に備わった外敵と察知する防衛本能のことであり、目や口となる逆三角形の3つの点を人間は顔として認識するという現象のことだ。その現象を実際に撮影してみると顔に見えないことがほとんどであった。3つの点以外にも点の周りの模様も顔と認識させるための重要な要素のように感じた。
自宅で見つけたものや道路で見つけたものを撮影していくうちに、実際に顔に見えるものと見えそうで見えないものがあることに気がついた。「顔」というテーマを示さなければ「顔」と認識できないものもあり、苦戦した。被写体をじっくり観察しながらの撮影だったため、今まで認識しそびれていたことを発見できるようになった。特に道路で見つけた被写体は上下逆さまに撮影しても顔に見えるということが面白い気づきであった。いつも見慣れた風景の中にある小さな発見に目を向け、そこから連想していくと更なる発見につながるということを大切に今後も撮影していきたい。