私にとって写真を撮ることは、今の自分に関与する様々な事象を記録し、それに対しての反応(痕跡)を残していく行為であり、日々自分自身を取り巻くものが目まぐるしく変化していく中ですぐに消費されてしまう感情の記録でもある。
その記録を行なっていくにあたり、物理的な距離が近いが故にどこか直視できないようなもどかしさや被写体に対する緊張感、距離感の取り方の難しさを感じることが幾度もあった。そんな中、自宅の窓からカーテン越しに外の世界を見た時、カーテンを隔てることで内側の世界と外側の世界を程良く繋ぎ、見ることを少しカモフラージュしてくれるような役割を果たしてくれた。そして、見るという行為がより簡易的なものへと変換され、隔てのない空間では見ることの出来なかった新たな視界が広がった。
この作品では、私にとって切っても切れない存在である自分の住む街の様子と、今の自分に関わりのある様々な人物を被写体として、それらにカーテンを隔て撮影を行い、どのように見ているのか、対象物との緊張感がどのようなものであるのかをカーテンの開き具合によって表した。隔てがあるが完全に遮断されていないという程良い空間で、閉じて見たり、離れて見たり、少し覗いて見たり、見ることで生じた感情をカーテンを用いて記録した。