Souvenir
⻆田 花野
初めて作った写真はフォトグラムでした。
カメラで写真を撮るよりもだいぶ前に、祖父の仕事場だった暗室での遊びとして小さな手を焼き付けたものです。
仕事をする祖父の隣で、何を話したのか、何を見たのかということは忘れてしまいましたが、
赤く暗い視界と鼻につく酢酸の匂いのことはぼんやりと思い出すことができます。
「Souvenir」で用いたネガに記録されているすべての瞬間に立ち合っていたはずなのに今の私は何も覚えていませんでした。
遠い過去に置いてきた思い出の写真をプリントすることは、記録を改めて記憶する行為です。
同時に、それらの写真と向き合うことで過去の記憶に触れた現在の時間も記録しています。
再プリントによってできた新たな写真には過去・現在・未来の間にある繋がりを見ることができます。
旅の記憶を思い出すためのお土産のように、またいつかの私に向けて、こうして形に残しました。