この作品は東京都心7区の地図になっています。

地図上の道を枠とし、その中に実際に撮影した185枚の写真を、その場所で見た角度に合わせて当てはめることで、

私だけの視点から作り上げた世界を表現しています。

 

地図は本来、空間情報を正確に伝えるためのコミュニケーションツールです。

地図を頼りに進めば、誰もが同じ場所に辿り着けます。しかし、私が描く地図にはそれだけでは収まりきらない何かが写っています。

通学中の子どもたち、休憩中のサラリーマン、建設途中のビル、街中でのアクシデント――

その場所で感じた美しさを、私は一枚一枚写真に収めてきました。

 

 

東京は日々変化を続けていく街です。

古い建物は取り壊され、新しいランドマークが次々と生まれます。

その姿は人生や人間関係にも共通する部分があると感じます。

この街でのさまざまな出会いや経験、そして変わりゆく景色やそこに存在していた人々を記録していく中で、

私の中にも新しい感情が生まれ、変化していくことに気がつきました。

 

 

この作品は私が東京で過ごしてきた記録であり、創り続けた空想です。

必死に生き続けても

ドラマのような毎日は訪れないし

ランドマークのように誰かに記憶されることは稀かもしれない

 

きっと消えてしまう日常が続くのなら

何を以て過ごせばいいのだろうか

足を踏み入れたことに後悔する

動けなかったことを今でも思い出す

近づけば 壊してしまいそうで

遠ざかれば 何も伝わらない気がして

 

けれど そんな距離感がいつしか

自分にとって とても大切なものに変わっていた

今日はここに 次はどこに

地図を見ながら 人ごみをかき分けながら

忙しなく歩いていると 自分にとってそこは

目的でしかなかったのだと感じる

 

ふと立ち止まってみると

たくさんの物を見落としてしまっていたことに気づいた

帰り道 少しだけ寄り道をしてみた

時間が許したので 違う道を歩いてみた

無くなってしまったビル

失くしてしまったおもちゃ

もう会えなくなってしまった人のことをふと思い出す

 

小さな灯火のように存在していた記憶に再会すると

嬉しくなったり 冷や汗が止まらなくなったりする

決して止めることはできないけれど

この瞬間を忘れたくないと 今は思う

これは一体どこからやってきたのだろうか

ふと考えることがあった

ゆっくり ゆっくりと

伸縮して 反転して

気づくと 全く違うものになっていたりする

 

原因は見落としてしまうほど微かなもので

起きがけに漂っていたコーヒーの香りとか

仕事帰りに見つけた美しい風景とか

きっとそういうものなんだろう

たくさんの人と出会った

触って 抱いて 探って

繋いで 交わして 見つめて

そこにあることを確かめた

 

少しだけ まともになった気がした

朝 ゆっくりと進む準急の電車の中で

なぜかふと寂しさを感じた

ずっとそこにあるものだと思っていたことが

とても儚く 刹那的なものだと知った

どれだけそこに居て欲しいと願っていても

あなたは変わっていってしまった

 

人は変わっていくものだろう

そして私もまた きっと変わりゆく

だからこそ

今はそこにあるものと真摯に向き合いたいと

強く思う 


現代社会は、所得格差や分断、過剰なクリーン化を求める動き、人口減少といった課題に直面し、大きな変化の波にさらされています。

これまでの価値観がまるで大転換を迫られているように感じる中で、本当に必要なものや大切なものは何だろうと、改めて考えさせられます。

 

しかし、立ち止まって見つめ直してみると、生きていく上で本当に大切なものは実は何も変わっていないのではないかと思います。

それは、日常の中にふと現れる美しい光景や些細な出来事、そして愛情や人と人とのつながりといった本質的な価値を持つものです。

ただし、忙しない現代において、そういった大切なものは見えにくくなっているかもしれませんし、時には軽く扱われているようにも感じることもあります。

 

 

だからこそ、改めて目の前にいる人をしっかりと見つめ、大切な思いを伝えていく。

愚直に向き合い、責任を持って接していくことが、今の時代において重要なのだと私は考えます。