Stand Still

神社でお参りをして空を見上げると、だいぶ離れたところに立つ巨木の枝が自分の頭上まで伸びていた。そのまま枝から根っこに目線を移していくと、やはり後ろにある巨木の枝だった。あまりにも大きな木で、何度も通っているのにその全貌を捉えることができない。

 

私が育った神奈川県の田舎町は、山やダム、川が沢山あり、自然は当たり前にあるものだと思っていた。しかし、東京に引っ越し、通勤時間帯に駅で溢れかえる人の多さと、木や緑の少なさに驚いた。自分の身の回りに当たり前にあった植物が都会では希少で、逆にとても特別な存在感を放ってみえた。

 

地面の下で、私たちの想像もできないほど長い根を張り巡らせているかもしれないし、驚くほど短い根っこかもしれない。

根っこかもしれない。人の手の行き届かない場所で、木は今日も立っている。