あなたには“それ“が見えるだろうか
人が抱く負の感情が大きく育った時、まるで別世界に住む生き物のように見えてくる。
広く深い水の中に住む“魚“のように。
ある日突然“それ”が見える様になった。
見開いた目は、何かを訴える様にこちらを見つめているかと思えば、
どこにも焦点が合わず虚空を見つめている様な不気味さもある。
ぬめり気のある体は、掴みどころがなく、触れてしまうと、何とも言えぬ嫌悪感が湧き出てくる。
歪な口の中には、悲嘆、厭悪、嫉妬が混ざり、一口で獲物を絶望へと引き摺り込む。
“それ”が見えないものも、見えないふりをするものもいた。
“それ“と共生を試みるもの、”それ“を操り楽しむものもいた。
そして、私の中にも“それ”がいることに気がついた。
私の体は、侵食され、変形してゆく。
私は人間のままでいられるのだろうか。
あなたはまだ人間だろうか