近野瑠花
この世界にはHSPと呼ばれる人々がいる。
HSPは5人に1人の割合で存在すると言われ、私もそのうちの1人だ。
HSP (Highly Sensitive Person /ハイリー・センシティブ・パーソン)とは
生まれつき非常に感受性が強く、繊細な気質を持った人を指す言葉である。
HSPは光・音・匂いなどの外部刺激や、自分の体調・感情の変化などの身体の内側で起こることを繊細に感じとる。
また、「心の境界線が薄い」と表現されることもあり、周囲の人の気分や環境に自分の心まで左右されてしまうため、
生きづらさを抱えている人が多い。
私も同様に、これまで生きづらさを感じることが多々あった。
しかし、HSPの気質も悪いことばかりではない。
心の機微を敏感に感じとることができるため、日々の暮らしの中で様々なことに強く感動することができる。
これは私の幸せであり強みでもあったが、次第に外界に細かく左右される心を煩わしく感じるようになり、
センシティブな気質に振り回されることなく、自分と外界を上手く分離できるようになりたいと考えた。
そこで、良くも悪くも感情が強く動く場面に遭遇した際、
「被写体とカメラの間に布やガラスを挟む、もしくはワセリンを塗ったレンズフィルターを使う」というルールを設け、
対象を曖昧な像として写真に切り取ることで自分の中に取り入れる情報を調節しようと試みた。
ぼやけるように、霞むように映し出される世界は私に穏やかな感情を授け、落ち着きを与えてくれる。
HSPが上手く生きていくためにはバランスを取ることが必要だ。
自分と外界の間に境界線を想像し、周囲からの刺激を受け取り過ぎないよう調節することで、
揺らぐことのない自分を獲得していきたい。